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「今まで見た脚本の中で一番美しいです」ホン・サンス監督作品上映と特別講義






先日、東京藝術大学横浜校地馬車道孔校舎にて
大学院映像研究科オープンシアター、ホン・サンス監督作品上映と
特別講義が入場無料で行われたので参加してきました。
学生さんばかりで場違いだったらどうしようと思いつつも
大人の方たちもチラホラいたので気後れせずに楽しんできました。
最初に2010年の作品『教授とわたし、そして映画』の上映と
その後、ホン・サンス監督の特別講義という形だったのですが、
まず、この昭和のエロビデオみたいなヘンな邦題をつけられてしまった(笑)
『教授とわたし、そして映画』がたまらなく自分好みの映画でした。
原題は『Oki's Movie(オッキの映画)』です。

オッキというのは映画の中に登場する映画学科の生徒の名前。
4つの章になっていて4番目の最後の章に、
まさに映画のタイトル、オッキの映画という章になります。
オッキから見つめたふたりのこと、同じ場所に行った時に
年上の人(教授)と若い男(映画監督)との行動を比べているのが面白い。
別の日に同じ場所でデートするのだけれど年上の人と、若い男とでは
同じ場所に行っても、態度を変えて行動も答えることも違うのがリアル。
これはすべての章がオッキの製作した映画ということなのかな。
なんだか、クセになる感じ。もう一度観たい。
この映画の面白さを言葉で言うのは本当に難しい・・というよりも
その後の講義でホン・サンス監督も映画のことを言葉で表現するのは
出来ないと言っていたように映画は言葉では語れないけれど
ホン・サンス監督の映画はどこか、なんだか妙にツボにハマりこんで観入ってしまう。
全部は観ていないし、観たものもほとんど感想をメモしていないのだけれど
『浜辺の女』『アバンチュールはパリで』『よく知りもしないくせに』『3人のアンヌ』
そして今回の『教授とわたし、そして映画』どんなに好きな監督の映画でも
何本かはハマれないものもあるし、体調や気分によっては
好きだった映画が色褪せて観える時もあるのに彼の映画は不思議と、
どんな状態の時でも受け入れることが出来るのです。

たぶん、自分のもともともっているすべてのリズムにとてもあうのだと思う。
空気を吸うように気が付くと受け入れて楽しんでいる。
どうしてなんだろう、すごく感動とか、すごく笑えた、すごく泣けたとか
そういうのとはかけ離れているのに、なんだか毎日観ても飽きない。
特に『浜辺の女』は大好きでDVDも買ってしまったくらい。
色々あってラストの浜辺で車を手伝ってくれた青年たちに
ムンスクが「ありがとう」と言った時になぜか涙が出てきちゃう。
何度も観ているのに、必ず。泣ける場面ではないんですよ、それなのに。
韓国の男なんて最低と彼女は思っていたんだけれど
思いがけず青年たちの親切にふれて笑顔になったムンスクを観ると、
つい泣けてきてしまうんです。『浜辺の女』では捨てられた白いワンコも出てきて
その描写が絵だけの絵本「アンジュール」を彷彿させるものもあったり・・・

・・って、
どんどん話が長くなりそう、まるでホン・サンス監督の講義みたいに(謎笑)
とにかく、どうしてアタシはこんなに彼の映画に惹かれてしまうのか
そのワケの欠片でも知ることが出来るかもしれないと思い参加してみたのです。

生のホン・サンス監督は一言で言うと、大人の方に言うのは
失礼かもしれないけれど、でも、やはり、もう、全体的に可愛い(笑)
寒がりなのか、ジャンパーのファスナーをがっつりしめて(途中脱いでいた・笑)
帽子もちょこんとかぶり、話しだしたその姿は芸術家とか映画監督というより、
どこか憎めないような、あったかそうな感じと、
そのまま監督自身の映画に出てくるような感じで
途中何度も質問に対して何度も絵に描いて説明しようとするのですが
当然客席には観えないのでどうすんのよって思いつつ(笑)
思わず『浜辺の女』を思い出したのです。まさに、そういう場面が出てくるのですが
この後、俳優の加瀬亮さんまで登場してくれて、彼も監督の絵を見たい方は
『浜辺の女』に同じ場面が出てくるのでそれを観て下さいと言ってくれていたので
ちょっと嬉しかったです(笑)そうなんです、監督の新作『自由が丘で』で
主演している加瀬さんまで登場してくれたのでした。
彼はアタシたちと一緒に映画を観て監督の講義を聞いていたのかな。
とても自然にとけこんでいらして細身で顔が小さい。
ちょっとお酒がはいっていたらしい(笑)でも話し方も堂々として
きちんと言葉を伝えてくれる気持ちのいい素敵な雰囲気の方でした。

とにかくあまりにも話してくれた内容が盛りだくさんだったので、
ほとんどの記憶がきれいさっぱりぶっとんでしまったのだけれども(笑)
講義によると意外にもホン・サンス監督は初めは映画ではなくて
演劇の演出学科を専攻していました。でも演劇は上下関係が厳しくて
色々合わなくてケンカして辞めてしまったらしい。その後アメリカで映画を学ぶことに。
影響された映画監督はロベール・ブレッソン監督。
(アタシはブレッソン監督といえば『ラルジャン』。心に残っている。怖い映画)
あとは、セザンヌの林檎の絵にショックをうけたそうです。
(セザンヌの林檎の絵)これだけあればいい、他にはいらないと。
それからラインの話。これは何度も話してくれました。
というより、結局、そこに行きつくという感じです。
ライン(偏見や思いこみのようなものかな?)を引くというのは
人間の性でもあり避けられないことだけれど、この人はこういう人だと
勝手にラインを引いて決めつけるのではなくて
ラインの引き方もそれぞれ違うし、そのラインからはみ出すものの中にも
素晴らしいことがあるかもしれないから、映画を作る時にも
決めつけないで他にもラインがあるかもしれない
素敵なことがあるかもしれないと作っていくと。
監督がピラミッドのような三角のような絵を描いてくれて、
普通は上を目指してそこに到達するように作るけれど
そこからはみ出したもの、そこに入らないものもたくさんあって
それを見つめていたいというようなことを話してくれた時、
この講義の前に観た『教授とわたし、そして映画』の中で
「何を美しいと思うかだ」というようなセリフがあったけれど
監督のものごとの見つめ方、見落としていること
見えなかったものも、見つめていきたいというようなことが
そのセリフにあらわれているような気がして、
どうして彼の映画に惹かれるのか少しだけわかった気がしました。
もちろん、この、わかったということも思いこみでしかないけれど。

そして、加瀬さんが映画というのは言葉にすると
詩人が使うような言葉でしか表現できないと思うと言っていて
本当にそうだよな、言葉では無理と感じました。
彼は『自由が丘で』の撮影で感じたのは例えば誰かに事前に
あの人悪い人だと言われていると、その人のことを知らないのに
先入観でイヤな人だと思いこんでしまったり、
(観客の方に金髪の方がいてその人に)金髪だから不良とか
そういう先入観や偏見に縛られたり・・・
今まで先入観にいろんなことが縛られていたのだけれど
監督と過ごして、そういうところから解放されたということ。
それから監督は事前に脚本を作らずにその日の俳優たちの印象で
その場で書いて毎朝渡すということについての補足として言ってくれた
「毎朝監督から渡されるシナリオは今まで見た脚本の中で一番美しいです」
という言葉がなんだかストンと心におちてきてパタリと居座りました。
文字にすると、伝わらないかもしれないけれど
加瀬さんの声や言い方がすごくよかったんです、ジーンとくるというか
この方は話し声とか伝え方がほのかに熱くていいなって思いました。
「今、書いたとは思えないぐらいの完璧な脚本なのです」と。
加瀬さんは脚本を渡された時に、あまりにも完璧で美しいので
しばらく止まってしまって、共演の方に「すごい脚本だね・・」と言うと、
「当り前よ、そうじゃなきゃこんなワガママな人のところに誰も集まんないわよ~」と
ちょっとオバさん風にモノマネしながら伝えてくれて(笑)
とてもいい撮影現場だったんだなぁというのがストレートに伝わってきました。

質疑応答で最後に質問した方がプロデューサーを目指しているのか
なったばかりなのか加瀬さんにも改めてオファーしたいとか言いながら
お金じゃないかもしれないけれどやっぱり映画であてたいし
お金がなかったら何も始まらないし、3人子供がいてテンパっていて・・とか
彼是おっしゃっていたのですが(記憶曖昧・笑)監督が
今からそんなこと心配しない方がいいです(笑)と言って、拍手笑顔で終了しました(笑)

なんだかんだと時間オーバーでとにかく色んなことを話してくれたのでした。
分析するのはイヤだし、映画を言葉にすることはできないとなりながらも
丁寧に熱心に絵にして説明してくれたホン・サンス監督。通訳の方も味わいがあり、
また進行する方が監督とは正反対な感じの方でかみ合わない感じも面白く(笑)、
加瀬亮さんまで登場してくれて、そして会場に入りきれなかった方たちのためにも
別室を用意してあげて講義の映像をリアルタイムで観せるなど
臨機応変な対応をして下さっていた映像研究科の方たちなどなど
無料では申し訳ないくらいとても濃くて素晴らしいひと時でした。

帰り際、位置的に煙草を吸っていた場所からでしょうか。
建物の小さな入口にたむろっていた方たちにまぎれていたら
アタシの目の前に加瀬さんの背中が。誰かが外に座って監督を待つと言い
このままアタシもどさくさにまぎれて待とうか、握手くらいしてもらおうかと思いつつ
なんとなく、待つのはやめて、馬車道を伊勢佐木モールに向かってそのまま歩いた。
寒さがほのかにしみる夜道はひんやりと、いい気持ちだった。

カテゴリー:くいしんぼうシネマ

Author.ガオ
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★飲喰雑記2012.4.9まではコチラ

 

私立探偵 濱マイクシリーズ BOX
映画三部作。
1作目「我が人生最悪の時」
モノクロ。哀しき友情。
日活映画の香り。
この玩具は閉まっておきなよって
ヤンのお腹をポンと叩くマイクの手が
人柄を表していて好きだなぁ。

2作目「遥かな時代の階段を」
ちょっと「エデンの東」のような
マイクの世界。

3作目「罠」
マイクとミッキー。
明と暗。太陽と月。これまた哀し。
不器用なマイクが恋する姿も良し。

「私立探偵 濱マイク」テレビドラマ版
テレビドラマ版濱マイク。
全話フィルム撮りで全話違う監督だから
キャラは一貫しているものの
各回の個性が強くある。
ドラマというより短編映画のよう。
毎回流れるオープニングの
「くちばしにチェリー」
(EGO-WRAPPIN')や、
YOUさんの予告などかつての
日テレドラマの傷天や探偵物語などを
彷彿させ毎週楽しみでした。

第1話「31→1の寓話」
緒方明監督作。
ちょっとマイクの服が
気合い入りすぎていて違和感(笑)
なかなか凝った話で面白い。
マニュアル通りに生きる哀しさ。
戦っている香川さん切ない。 野毛に
金ちゃんのお墓探しに行こう(謎笑)

第2話「歌姫」
前田良輔監督作。
横浜下町色全開で
このドラマの回のロケ嬉し。
磯村屋とかに焼きソバ
食べに行っちゃったもん(笑)
あの狭い路地も探しちゃった。

第3話「どこまでも遠くへ」
萩生田宏治監督作。
自分が生きている意味。
「ちゃんともっているよ」と
ハートをポンっとたたくマイクが優しい。
あきらかにメリーさんだよねという役柄で
岸田今日子さんが黄金町駅近の橋で
登場してくれるのが嬉しかった。

第4話「サクラサクヒ」
行定勲監督作。
この回が一番映画の濱マイクを
彷彿させる。話の軸になるのは
丈治とメイホアなんだけど
坂道の階段みたいなとこで
寝ころんで待っているマイクとか
横浜港の税関で情報を聞くとことか
二人組の刑事とのやりとりとか
あぁ、これがマイクだ~って感じです。
行定監督は映画版の時に助監督でした。
マイクとは縁が深いです。

第5話「花」
須永秀明監督作。
偽物マイクが出てきたり大阪に行ったり
マイクが黄金劇場でバイトしたり(笑)
ゴタゴタしている中でリストラ問題
独りぼっちの子供・・(泣)
子供の時の思い出がないから
子供にどう接していいのか
わからないというマイクに共感。
そういえば星野君・・・・いた?(謎)

第6話「名前のない森」
青山真治監督作。
ちょっと異色なマイクの世界感
いい意味でぶっ壊してくれていて
斬新で面白い。そうして、
「濱マイク」が「濱マイク」で
いたくなくなるというのは、実は
映画版の頃から伏線として
静かにあると思います。

第7話「私生活」
岩松了監督作。
岩松さんって器用な方なんだなぁ。
役者さんとしても劇作家としても
監督としてもなんでもこなしてしまう。
この回は野毛のパチンコ交換所で
マイクに情報をくれる謎の女サキが中心。
でも相変わらず謎の女です(笑)
赤いワンピースが華やかな
「誰も得はしないわ」というラストが好き。

第8話「時よとまれ、君は美しい」
石井聰亙監督作。
古風だけれど名作。
石井ワールドのロックな世界観。
自白剤の伏線。
意識が朦朧としている中での
声にならないくらいの
マイクの告白。 美しくて
哀しいラストに思わず涙・・。

第9話
「ミスター・ニッポン21世紀の男」
中島哲也監督作。
ぶっ飛んでます。アホです(笑)
中島ワールド全開です。
マイクとタダシの友情にもホロリ。
鑑別所で「立てよ、タダシ」と
言った時のマイクと同じように
都橋商店街でのラストでも
「立てよ、タダシ」といったマイク。
どんなに時が流れていても
ハートは一筋。 どこまでも
友達を見捨てないのだ。

第10話「1分間700円」
竹内スグル監督作。
クールです。この回のマイクは
ファッションのせいかな、どこか
『トゥルーロマンス』の時の
スレーター演じるクラレンスみたいで
やんちゃでカッコイイ雰囲気なのよねぇ。
しかし、ほんとに殺し屋の浅野さんが
ハマりすぎです。赦される意味を迷い
命を粗末にする独りの人間を
なんとかしてすくいたいと思う
命が消えそうな人間とのやりとりは
切ない感じです。ラストもクール。

第11話「女と男、男と女」
アレックス・コックス監督作。
マカロニウエスタンですよ、横浜で(笑)
おまけにミルクのエピソードまで。
色々盛り沢山なのに最後には
カラスでまとめちゃう
アレックス・コックス監督ステキです。
ってか、もう航海していない船で
どこへ行く?田口トモロヲさん(笑)

第12話 「ビターズエンド」
利重剛監督作。
最終回らしい最終回。
レギュラーメンバーが全員で
横浜鑑別所の歌を合唱する場面が
なんだか、すごく好きだった。
Bを演じたSIONさんは最高だった。
マイクを演じた永瀬さんの
どんな時も本気の思いが
ドカンと伝わってくる
迫真の演技に胸打たれる。
ラストに流れる「通報されても」
マイクのモノローグ。涙、涙。
利重監督の世界は温度があるね。




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